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コンクリート構造物の非破壊検査・衝撃弾性波法の紹介


衝撃弾性波法とは

衝撃弾性波法(しょうげきだんせいはほう)とは、コンクリート構造物などの表面をハンマーや鋼球又は励磁コイルなど磁気的な方法で衝撃を与え、その際に発生する「弾性波(振動)」をセンサーで伝播速度・伝播時間・基本周波数・位相等を測定・解析することで、内部の状態を壊さずに調べる非破壊検査手法の一種です。主にコンクリートの厚さ測定、内部のひび割れ、空洞(ジャンカ)、強度の推定などに用いられるコンクリートの非破壊検査に利用されます。

衝撃弾性波法は、測定が容易であり、入力する弾性波の波長が長く、エネルギーが大きいため減衰しにくく、複合材料であるコンクリートの非均質性に起因した弾性波の減衰・散乱の影響をさほど受けずに、比較的大きな構造物への適用が可能になります。


1.衝撃弾性波法の測定の仕組み

基本的原理は、「やまびこ(エコー)」と同じです。

  • 打撃: コンクリート表面を鋼球などで叩き、弾性波を発生させます。
  • 伝播・反射: 波は,コンクリートの内部を伝わり、反対側の面や内部の欠陥(空洞やひび割れ)に当たると反射して戻ってきます。
  • 受信・解析: 表面に設置したセンサーで戻ってきた波をキャッチし、その往復時間や周波数を分析します。

2.コンクリートの何がわかるか

衝撃弾性波法では、主に以下の項目を評価できます。

  • 部材の厚さ: 波が底面から反射して戻ってくる時間から、コンクリートの厚さを算出します。
  • 内部欠陥の検出: 途中に空洞や剥離があると、そこで波が反射したり、伝わる速度が遅くなったりするため、異常を発見できます。
  • コンクリート強度: 波が伝わる速度(弾性波速度)はコンクリートの硬さと相関があるため、圧縮強度の推定が可能です。
  • ひび割れの深さ: 表面に見えているひび割れが、内部でどの程度の深さまで達しているかを測定できます。

3.衝撃弾性波法の主なメリット・デメリット

(1)メリット
  • 非破壊: 構造物を傷つけずに検査できる
  • 効率的: 1箇所の測定が数秒〜数十秒と非常に速い
  • 深部まで届く: 電磁波レーダーよりも深い位置の探査が得意
(2)デメリット
  • 表面状態に左右される: 表面が著しく粗いと測定が難しい
  • 解析の習熟: 正確な判定には専門的なデータ解析の知識が必要
  • 鉄筋の影響: 密集した鉄筋があるとノイズになる場合がある

衝撃弾性波法の主な方法の案内

衝撃弾性波法には、iTECS法、表面2点法、インパクトエコー法、電磁パルス法などがあり、ダム、トンネル、港湾の埠頭、道路、建物等のコンクリート構造物の非破壊検査として活躍しています。

<参考>
  日本非破壊検査協会規格「NDIS 2426-2コンクリートの非破壊試験-弾性波法-第2部:衝撃弾性波法」


衝撃弾性波法1:iTECS法

鋼球でコンクリートを打撃すると、弾性波(P波+表面波)を生じ、P波は球状に伝搬して、床版や壁など一定の厚みのあるものはP波が同じ周期で多重反射します。
鋼球による打撃によって生じる弾性波を加速度センサで観測することにより、弾性波の伝搬速度からコンクリート強度を推定したり、反射時間を測定して、ひび割れ深さや、構造物内部の欠陥を非破壊で検査するシステムです。
コンクリート内部にジャンカ・空洞・ひび割れ等の内部欠陥が存在すると、コンクリートの弾性係数の低下や、弾性波が迂回して伝搬経路が長くなるため、見かけの弾性波速度が遅くなったり、厚さが健全部より大きく測定されたり、スペクトル波形に乱れを生じたりするので、それら異常箇所を探すことにより内部欠陥の探査が可能になります。
また、コンクリート構造物が火害や凍害などによりコンクリート表面が劣化している場合は、コンクリート表面の弾性波速度が低下するので、それらの診断評価にiTECS法による弾性波速度測定(強度推定)が有効です。
iTECS法は国土交通省の「微破壊・非破壊試験によるコンクリート構造物の強度測定要領」及び「非破壊試験による鋼製防護柵の根入れ長測定要領(案)」に使用されているほか、水産庁の「漁港施設における表面P波法による簡易機能(老朽化)診断手法適用マニュアル(案)」に記述され、表面P波法として漁港施設の維持管理に役立てられています。

iTECS法の測定装置
伝搬時間差法の模式図 多重反射法の模式図

衝撃弾性波法2:表面2点法

表面2点法は、構造体コンクリートの弾性波速度測定方法の一つで、間隔および感振方向が固定された2個の振動センサを用いて衝撃弾性波の弾性波速度を測定する方法です。
振動検出器をコンクリート表面に接触させ、2個の振動センサの延長上をハンマーで打撃して弾性波を発生させ、振動センサ間の伝播時間差と測定距離(30cm)から弾性波速度を算定します。
コンクリートの弾性波速度と圧縮強度の間には強い相関関係があることが知られており、圧縮強度は弾性波速度と事前に求めた圧縮強度推定式(検量線)から決定されます。
国土交通省の「微破壊・非破壊試験によるコンクリート構造物の強度測定要領」に利用されています。

表面2点法に用いる測定器表面2点法による弾性波速度測定の模式図


衝撃弾性波法3:インパクトエコー法

インパクトエコー法は、 構造物の表面に鋼球で打撃を与えて弾性波を発生させ、構造体内部を伝播・反射した弾性波を加速度センサで受信、チャージアンプで電圧に変換し、得られた波形の周波数解析を行いスペクトル等に処理して、コンクリート内部の欠陥評価を行う非破壊による検査技術です。
インパクトエコー法はASTM C1383-98aで規格化され、コンクリート及び道路舗装の厚さ、表面亀裂の深さ、内部の空隙・剥離・気泡、グラウド充填状態などが測定できます。
コンクリート表面に打撃などにより弾性波が入力されたとき、弾性波の縦波成分は、コンクリート内部の欠陥あるいは異なる材料の境界面において反射を起こし、コンクリート表面と欠陥あるいは異なる材料の境界面との間に往復する定常な波が生じます。(縦波共振現象)
インパクトエコー法はこの現象を利用して入力点付近で計測された波形の周波数スペクトルのピーク位置からコンクリートの内部状況を推定する方法です。

インパクトエコー法に用いる測定機器


衝撃弾性波法4:電磁パルス法

電磁パルスにより、コンクリート中の埋設された鉄筋を磁気的に加振して、鉄筋自身から発生した弾性波をセンサにて受信し、その受信信号を解析することで鉄筋の腐食状況を診断する技術です。
鉄筋が腐食すると表面に腐食生成物が形成され,体積が増えるためにコンクリートにひび割れやはく離を生じ,鉄筋とコンクリートの付着が低下します。この付着の低下を検出することによって鉄筋の腐食を検出しようとする方法が電磁パルス法です。
鉄筋の腐食のほか、PCグラウトの充填状況、鉄筋破断箇所などを非破壊で評価することができます。

電磁パルス法によりコンクリートの非破壊試験を行う模式図


衝撃弾性波法5:表面P波法

表面P波法は、漁港施設の老朽化について、その状態を把握しようとする場合に使用されています。
簡便にコンクリート構造物の強度、ひび割れ深さ、内部空隙の有無など損傷の状態を定量的に把握することができ、目視調査と表面P波法の調査結果から、港湾施設の劣化状況を把握して、補修・補強を計画し、または詳細調査の位置を決定します。

 <参考>

「漁港施設における固有振動及び透過弾性波を用いた基礎部と提体内部欠陥の診断手法 適用マニュアル()
令和 3 年 10 月 〔水産庁漁港漁場整備部〕

「漁港施設における表面P波法による簡易機能(老朽化)診断手法適用マニュアル()
平成284月〔国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産工学研究所〕

  • 漁港施設の強度測定

    港湾施設において、衝撃弾性波法による劣化状況の調査写真
  • 漁港施設の劣化状況調査

    港湾施設において、衝撃弾性波法による劣化状況の調査写真

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