火災に見舞われた鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨造(S造)の建物を調査し、火害等級を決定し、今後の再使用に耐えうるか診断します。以下に主な調査内容を示します。 予備調査 建物関係者や消防署などから、建物概要及び出火原因・出火位置・出火時刻・鎮火時刻などの火災状況に関する情報を収集します。 目視調査 煤の付着状況、コンクリートの変色やひび割れ状況、スラブのたわみ、鉄骨の変形、備品等の熱による損傷状態などを観察し、火災の進展状況や受熱温度を推定します。また、打診棒や点検ハンマーでコンクリートに剥離が生じていないか確認します。 中性化試験 火災により鉄筋コンクリート構造物が500℃以上に熱せられると、水酸化カルシウムが熱分解し、アルカリ性が減少するので、鉄筋が腐食しやすい環境になります。試験を行って受熱温度を推定し、鉄筋位置まで中性化深さが達しているかを調査します。 コンクリート強度試験 火災による受熱温度及び受熱時間により、コンクリート表面に近い部位の強度が低下します。 衝撃弾性波法による強度推定 コンクリート中を伝搬する縦弾性波は、火災により劣化した部分をよけて内部を通るため、見かけ上の距離が長くなり、弾性波速度(強度)が低下します。健全な部位と比較することにより、強度がどの程度低下しているか調査します。 コア採取による強度試験 部材からコアを採取するので、断面の損傷は大きくなりますが、コンクリート強度やヤング係数を確実に測定できます。またコアの弾性波速度を測定した後、強度試験を行うことにより、非破壊試験である衝撃弾性波法のキャリブレーションになります。 鉄筋の引張試験 コンクリートの爆裂により鉄筋が露出している場合など、鉄筋に被害が及んでいることが明白な場合、鉄筋を抜き取り、力学的特性(降伏点、引張強さ、伸び)が鉄筋の規格値以上であるかを確認します。 S造部材の調査 S造に用いられる鉄骨は、熱せられると変形しやすく、高温では鋼の結晶構造が変化するので、受熱温度を推定することは重要です。塗装や耐火被覆の損傷、柱の倒れ、梁のたわみ、座屈の有無、高力ボルトの変形・すべり、鋼製デッキスラブのたわみなどを調査して受熱温度を推定します。また。鋼材の試験片を火害部から切り出し、機械的性質(強度、伸び、衝撃性能など)を確認します。 参考画像 マンションの火災 梁・スラブのひび割れ 曲がり落ちた鉄骨 爆裂部から鉄筋の切り取り 【参考】 建物の火害診断および補修・補強方法指針(案)・同解説 日本建築学会 火害調査のお問い合わせについて
火災に見舞われた鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨造(S造)の建物を調査し、火害等級を決定し、今後の再使用に耐えうるか診断します。以下に主な調査内容を示します。